もぬけるから

旧い私の記録

味の対比効果

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寮食でスイカが出た。もとから夕食用におにぎりを食べてたんだけど、寮食に駆け込んだらありつけた。3日前から冷蔵庫でお預け状態だったスイカがやっと食べられて嬉しい。

1人1切れが基本だけど、余ったら食べてよいので、合計4切れ食べた。美味しい。塩も用意されてたからかけたけど、甘くなるなあ。塩は偉大。4切れも飽きずに食べきった。お腹ぱんぱん。

 

夏。所属劇団には、スイカより夏らしいイベントがある。

8月3日から、所属劇団の新人を鍛えるための5日間の身体訓練というのが始まった。今年は2年代として、新人をサポートする役割をしている。

朝10時から18時まで、筋トレや円陣などの身体を使うメニューから始まり、午後はお客さんにどう見せるかを考えるメニューを中心にこなす。めちゃくちゃしんどくて、心が折れそうになる者もいながら、みんなで乗り越えていく。

新人を見ながら、できない子がいるたびに去年の自分を重ねてしまって、胸がきゅってなる。私も今の新人のように身体訓練を受けた。夏から9月中旬の新人公演にかけて、充実していたけど、苦しかったことも思い出される。自分の出来なさを思い知り、同期にいっぱい迷惑をかけていた。身体が使えない、筋力がない、声が出せない。比較的体が丈夫で、倒れず、夏はほぼ全日行けたのはよかったけど、見られる自信もなかった。評価する人の目が怖くて、見られないところで練習したかった。

 

でも、身体訓練最終日、覚えてる場面がある。身体喪失という動かす四肢をだんだん制限するダンスメニューの時のこと。その時、一番恐れていた新人を教えるリーダーの目を奪うことを真剣に考えていたのだ。動きながら、その先輩の目線がこっちに向くように必死にアピールして、どんどん見てもらおうと思った。釘付けになるくらい、ほかの同期に移らないよう、私だけを見てくれ!と思って動いていた。

その後の先輩からのコメントは、珍しく褒め言葉だった。一番目立っていた、と言ってくれたのだ。

なんかが外れて、殻を破ったようだった。極限状態だったからなのか、原因はわからないし、多分同じダンスは二度とできない。けど、これからもあの瞬間のこと忘れないと思う。

 

 

私にとって初めての後輩になる新人は、まだ足りないところもあるけど、とっても面白い。それぞれ個性が見えてきて、新しい面もわかってきた。

 

今年の新人にとっても、身体訓練が、新人公演稽古が、スイカにとっての塩のような期間になればいいのだけど。身体訓練では褒められるだけじゃなくて、時には怒号を浴びる。それでも、できればめげずに食らいついてほしい。どこかで殻が破れるといい。新しく成長できるといい。新人それぞれの個性を壊さず伸ばし、より美味しくなるような時間に。

私も頑張って自分の甘々なとこは隠し味に、みんなのよさを引き出せる塩になりたい。